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『職原鈔』北畠親房

職原鈔は、北畠親房の著した、官職についての解説書といつたら、おそらく大方はあたつてゐると思ふ。(「鈔」は「抄」とも書かれる。「抄」は「鈔」の俗字とか。)
北畠親房は、いはゆる南北朝時代、南朝の公卿である。「大日本は神國なり」ではじまる、その著『神皇正統記』も有名である。すなはち、日本の日本たる所以は、日本が天地開闢以来の「神の国」であることにあると表現したのである。これが親房の思想の中核であるやうだ。(まだ神皇正統記は読んでゐないが……) それは、武家時代、南北朝時代といふ混沌とした社会の中で、平和を求めた志し高い者が、歴史の中に、日本といふ国のあるべき姿を斯く見出したといふ所であつたと思ふ。
職原鈔の内容は至つて簡単で、たゞひたすら、左大臣・右大臣だとかカミ・スケ・ジヤウ・サクワンとかいつた官職の制度を列挙して、それにその官職の由来や決まり、沿革を記してゐるだけである。
奥書きに云ふ。
「或人 官位昇進之次第を聞かんと請ふ。口實に傳へんと欲すれば、臆説に似たるべし。手澤に貽さんと欲すれば、來者に慙る有り。予 俗塵を出でて已に十年の寒暑を移せり。况んや逆旅に在り。一卷の文書を蓄へず。每事荒忽として恰も盆を蒙るが如し。上章執徐の春。夾鐘候豫の日。強ひて翰を染めて、聊か以て卷を終ふ。餘習に引かれて後嘲を顧ざるのみ。」
「或人が親房卿に就いて、官位昇進の次第を教はらうと請うた。それで、口伝へで教へてはその説も確かでないので、物に書きしたゝめてその根據を書きのこしておかうと思ふ。しかし旅中の作だから、後に見る人には見ひがめられる所もあらう。俗世を去つて出家してから既に十年、しかも今は旅中にあれば、書物の一つもなく、たゞおぼろげな記憶が頼りである。人の頼みなのでことわりもせず、無理に筆を起して、興国元年春二月下旬、書き終へた。たゞ、赴くままに書いたので、後の嘲りをも顧みないだけだ。」
(拙訳。とても粗い訳ですが、おほかたはこんな感じだと思ひます。御容赦願ひたし)
神皇正統記と大体同時期に出来たらしいが、その内容を細かくみると、「この官位にはかくかく然々の由来や習はしがあつたのに、近頃は、本来あるべき官位のしくみに適つてゐない。」といふやうな評が多く加へられてゐる。何かで聞いたが―何で聞いたか忘れてしまつて面目ないが―「中世は、既に官位の制度が乱れてゐて賎しい身分や本来任を受ける資格の無い者がその官位に就いたり、個人の好き勝手で官名を名乗つたりする事が横行してゐて、その官位の意味や意義が全く忘れられてしまつてゐた。この書は、それを憂へて、官位とは皆、古い由来・根據があるのであつて、皆、天皇の恩寵によるものなのだといふ、親房の思想の主張によつて書かれてゐる」といふやうな事を聞いたことがある。さう思つて読んでみると、確かに、所々の文にそんな嘆きがこめられてゐるのを感じる気がする。
簡単なので、官職制度について一通り知るために、さらつと読み通すのにも適してゐると思ふ。官職の解説は、近代の著作では和田英松著『官職要解』なんかが良いらしい。
親房卿の思想として読んでみても、まだ、これだけでは分からないやうなので、そのうちに神皇正統記も読みたい所である。
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平 春明

Author:平 春明
住まひは神奈川県鎌倉市。東京の渋谷の丘で国文学の勉強をしてゐる学生、はるあきらです。なにくれと勉強した事や、面白かつた事などをかきつらねていきます!
普段から歴史的仮名遣ひですので、こゝでも歴史的仮名遣ひです。
主に、国文学、国語学、日本数学、その他諸々、気に入つた物を紹介していきたいと思ひます。

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