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皇典講究所 山田顯義演説・井上毅演説(明治二十一年)

 明治二十一年、皇典講究所の規則改正に臨んで、司法大臣山田顯義と法制局長官井上毅の演説が行はれた。二年後の二十三年には憲法御發布があるが、立憲體制が布かれ、いよいよ近代國家として日本の國家が整へられようとする時期に當たる。
 兩氏は、新しい國家の樹立に當つての、國典研究の重要性を主張してゐる。
 その趣旨を實現する形で、明治二十三年、皇典講究所内に、國文國史國法の研究機關たる國學院が設置される。

 こゝに載せる文章は、同所關係者により發刊された雜誌『日本文學』の第五號(二十一年十二月發行)に載せられた當演説の筆記の引用。

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漢文いはゆる受動の「爲~所~」の構文について

 今回は、久々の漢文法の記事です。「爲~所~」といふ語法についてまとめましました。
 たしか二年前、二度目の二年生だつたと思ひますが、漢文の講読の授業で安井息軒『管子纂詁』の序文を読んでゐて、「晁公武以爲尹知章所託」といふ句に当つて、先生が「晁公武以(おも)ふに尹知章の爲に託せらる」と読んだのを聞いて、私がその読み方はをかしいとつっこんで言ひ争ひになりました。その時の私の論点は「以爲」ならわかるが「以」だけでオモフと読んでいいのか、といふのと、これは受動の文ではなく単純な「~と爲す」といふ文ではないか、といふことでした。その時は先生は、イヤイヤ、ソンナコトハナイネ、みたいな感じで折れてくださらなかつたのですが、翌週は先生の方が、やつぱりそつちの読みのはうが良いやうだ、と訂正して下さいました。
 そんなこんなの中で、「爲~所~」について調べたことがありはしたもののまとめるまでもなかつたのですが、ここ最近、読書中にふと思ひつく所があつて、まとめる気になつたので、そんな事を思ひ出しながら、実際に論証できることをまとめてみました。
 以下、本論。

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春明の論文

ご無沙汰してをります。春明の三月に書いた論文が、本學發行の雜誌七月號に掲載されました。御笑覽頂ければ幸ひです。

釈文(翻刻)作り覚書

写本などの手書き字の釈読のしかたの自分なりの方針です。色々な立場や理念があると思ひますが、学生などの参考になると思ふのでのせます。

・変体仮名は常用の仮名に統一する
 仮名として書かれてゐる以上は仮名で釈する、かつ、仮名の字体の違ひには内容に対する有意的なものがないと考へるのです。たとへば「かきつばた」といふ語が「加支川波多」といふ原字から来る平仮名の字体で書かれてゐるとすると、現行の仮名字体と同じである「か・つ・は」は今の平仮名にし、現行と異なる(すなはち変体仮名)「き・た」は漢字に作り、「か支つは多」のやうに釈するやうな事はよろしくありません。なんで「支・多」だけ漢字で釈するのかと疑問に思ふのですが、恐らくは、釈する人が仮名を見慣れてゐないためにこの字が平仮名であるといふことの認識があまりなく、漢字に見えてしまふのだと思ひます。また仮名字体の中にも漢字に近い形のものがあります。とにかく見た目にまどはされず、仮名文字なのか漢字なのか分別をつけるのが大事だと思ひます。仮名文字ではない万葉仮名や草仮名になるとまた別ですが。ではなぜ字体が違ふのに全部「かきつはた」と現行の平仮名に釈してもいいのかといふと、仮名の字体は、書写した人間の持つ癖やその時の書きぶりなどによつて簡単に書き換はる性質のもので、特にその字体で書くことに、内容に関はる意義はないからです。漢字のとめはねと同じで、意味のない違ひは無視するといふ方針をとります。
 また「八・二・三」といふ原字からくる「は・に・み」の平仮名だけ片仮名で釈して「いろハニほへとあさきゆめミし」みたいな釈し方をする人がありますが、これも昔の用字としては平仮名の一字体であつて、たまたま片仮名に形が似てゐるだけに過ぎないので、片仮名に釈する意味はないと思ひます。
 これらの問題は詰まる所、釈読する人が昔の用字意識に疏く、現代的な目を離れられない所からくるのだと思ひます。

・異体字は当時の用字法に基づいて、統一したり書き分けたりするのが理想
 これも変体仮名と似た話ですが、意味のある使ひ分けのある字は、そのまゝ書き分けを保持しますが、違ふ書き方をしてゐるからといつて読みや意味に違ひを持つてゐないものは統一するのがよろしい。たとへば「未」と「末」では字そのものがちがひますが、「吉」と「𠮷」は、書き分ける意味といふものなしにその時の筆の運びや書き手の気分によつて違ふ書き方をする場合がある。これは書き分けが何らかの違ひを表現しようとしてゐるのではないので統一してよい。活字といふものが統一的なものである以上、字体に余計な分別をなすと、違ひといふのが手書きの時よりも強調されて、読む人に対して何か有意義な差を期待させてしまひますからよした方がよいかと思はれます。
 ですから字体に使ひ分けがあるのかないのかを時代的なことや資料の性質などから吟味しておく必要があります。使ひわけがあるのかないのか判断が難しいときは、姑息的な方針として、個人的には、偏旁そのものがちがふ異体は書き分け、点画の差異に過ぎないものは統一する、のやうな方針を取つてゐます。たとへば「吉・𠮷」は点画の表現差に過ぎないと見て統一。「杯・盃」は「木」と「皿」とで偏旁が違ふので書き分けておく、といふやうなことです。基準が人によつて揺れたりするかもしれないので、凡例なんかで断つておくといいですね。

・原本に書き分けのあつたものを、他者が書写したものは
 たとへば平仮名の「ん」といふ字はもともとは「む」と同じ仮名で、マミムメモのムも撥音のンも古くは「ん」といふ字体を含むムの平仮名で表現してゐたのですが、その用字をしてゐた時代の作品の原本を釈する場合は皆「む」で釈すればよいわけです。しかし、それを「ん」の字体が撥音ン専用になつた時代の人が書写して、撥音ンに当たる所に「ん」の字体も「む」の字体も両方見えるとき、これは「む」と釈するのか「ん」と釈するのか、判断がむづかしい。土佐日記の写本で迷つた所です。


以下の続きは、おまけでわたくしが考へてゐる、釈読の理念といふか、どのやうな態度で臨むのかといふやうな論です。

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「翻刻」といふ言葉の疑問

「翻刻」
 手書きの字を活字にする事を「翻刻」といふのは、良く言へば俗用、悪くいへば誤用である。「釈読」「釈文」といふ言葉の方がふさはしいであらう、といふ論。

★いかがおすごしでせうか。春明は無事四年生になりました。卒業は単位制限の限界を超えれば、出来ると思ひます!三月末に懸賞論文を出しました。結果は七月ごろに出ると思ひます!説文階梯はまうしばしお待ちください。ほんとスミマセン……。★

 写本やら整板本の手書きの字を今の活字に移すのを、俗に「翻刻」といつてゐる。しかし本来「翻刻」といふのは「不許翻刻、千里必究」のやうに、版本を再び彫ることをいふのであつた。覆刻といふのに大体同じい。これは辞書を引いてもわかることである。「不許翻刻」といふのは、本をそのまま写して版を作つて海賊版を出すのを禁じた文句である。それを活字にすることを意味するやうになつたのは、恐らくは活版印刷が始まつて近代以降、写本や刊本を、単行本やら文庫本にして覆刻する意味で「翻刻」といつてゐたのが、その作業が主に手書きの字を活字に移し換へて版にすることであつた事から、そこから、何となく活字本にすることを「翻刻」と辨へるやうになり、やがて、一冊の本にならないで数行や一行単位でも、字を現代の活字にすることを「翻刻」といふやうになつたと思はれる。推測であるが。
 人間の言葉遣ひの意識といふのは自分勝手なもので、何も知らない間は誤用だの転義だの気にしないけれど、一度さういふ事に気づくと、どうもさうした言ひ方が曲がつた物に聞えてきて、使ひたくなくなる。使はれてほしくないと思ふのは、もつとわがまゝであるけれど、人情といふものですね。なので私くしとしてはかういふのを「翻刻」とはいひたくなくなつてゐる。
 では何といふのかといふと「釈読する」といつてゐる。釈読して字起こししたものは「釈文」といふ。(わたくしどもはシャクモンと呼びならはしてゐるがシャクブンでもいいのだらう。)幸ひに辞書にも、「釈文」に、読みにくい筆跡を読み易く直したものといふやうな説明をつけてゐるし、古い書物に「那須国造碑釈文」のやうな言ひ方で、古い碑文を通用の楷書にしたものを呼んでゐる。(早稲田古典籍データベースなどで検索してご覧ください。「経典釈文」のやうな用法の方が古いかもしれないが、それはまあ、別として。)書道の方では、法帖の中の草書や古字の傍に楷書を付けたりしてそれを釈文といつてゐるのである。個人的には、こちらの方が由緒も字面もしつくりくるので、この言葉を使ひたい。
 俗語は俗語で構はないとも言へるけれど、学問の世界では、……「正名」とやうに言つていいのかわからないが、精密な学問を築くといふ意味でも、少し用語に敏感になつてもいいと思ふ。まいて文学なるをや。
プロフィール

平 春明

Author:平 春明
住まひは神奈川県鎌倉市。東京の渋谷の丘で国文学の勉強をしてゐる学生、はるあきらです。なにくれと勉強した事や、面白かつた事などをかきつらねていきます!
普段から歴史的仮名遣ひですので、こゝでも歴史的仮名遣ひです。
主に、国文学、国語学、日本数学、その他諸々、気に入つた物を紹介していきたいと思ひます。

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